自治会活動

テレビのデジタル化


古市のミニサテ局
 2011年7月24日で現在のテレビ電波(アナログ放送)は停止され、全てのテレビ電波(地上波)はデジタル化されるということになっています。テレビを買い換えなくても、アダプターを取り付ければテレビが見られるとはいうものの、実は農山村部では大変な事態が起こる可能性があるのです。

 兵庫県は近畿でも最も難視聴地域が多く、村々で共聴組合を作ってテレビを受信しています。

 現在の共聴組合の方法は、一つは、ケーブルテレビ方式といって、各家庭に向けて同軸ケーブルを張り巡らし、各家庭では分配機で分けられた電波がケーブルでそれぞれのテレビに接続されています。

 もう一方の方法はミニサテライト方式といって、近くの有力なサテライト局(山の上の送信所など)の電波を受信して、周波数競合を起こさないように周波数変換(チャンネルを変える)をかけて、小さな電波塔から小集落の範囲に向けて再発信し、それを各家庭のアンテナで受けるという方法です。

 この場合、各家庭内では分配機を使ってケーブルで各テレビに接続している場合と、室内アンテナや単独アンテナで家庭内ケーブル配線をしなくてもテレビが見られる場合もあります。

 古市はどの方法をとっているかというと、最初はケープル方式だったのですが、末端に行くほど電波の質が落ち、ケーブルの保守も大変でしたので、現在はミニサテライト方式になっています。

 古市駅西の煩悩山の出っ張りに一本の送信塔があるのですが、向かいの中山という富山の頂上付近で大阪の生駒山から発信される電波を受け、ケーブルで1.5q程の距離を引っ張ってミニサテへ送り、篠山の衣笠山からのUHF電波は送信塔のアンテナで受け、それらをいったん周波数変換をかけて、別のUHFチャンネルに配分して古市・波賀野新田の両地域(半径1qほど)へ再発信しているのです。
 民放関係とNHKの電波がありますので詳細はちょっとばかり不明です。あしからず。

家庭のアンテナ さて、テレビ電波がデジタル化になると、ミニサテ方式を残すとすれば、その改修にどれほどの経費が必要なのか、まだ試算すら出来ない状況です。一つには、ミニサテからデジタル電波を再送信することが周波数の割り当て上から可能なのかどうか。そして、受信設備と送信設備の取り替えにどれほどの経費がかかるのかということです。

 古市の地域には光ファイバーが通っていて、インターネットや光電話、あるいは光ケーブルによるテレビ受信をされている方もあります。現状のNHKと民放だけを見るためには、光テレビだけの契約であれば月額約5,600円ほどの負担になります。(光ネット+光電話+光テレビ=月額約9,000円ほどになります。)

 ところが、現在の共聴組合の会費は1世帯月額200円なのです。光ケーブルに変更すると、月額で28倍もの負担になってきます。(今現在の料金での話です)

 デジタル化をすることによって、周波数配分の問題も解決するでしょうし、情報量も多くなって生活には便利になるかも知れませんが、一人暮らしの高齢者世帯では、果たしてその情報が有効に活用できるかどうかはなはだ疑問ですし、テレビ受信料の実質値上げということになると、低所得世帯や老人世帯では大変な社会問題ということにもなります。デジタル化に対応して行けない人々を置き去りにすることはできません。

 農山村で過疎になり、高齢化している地域は、実は電波の届きにくい場所でもあるのです。華々しいデジタル化PRの裏には、もしかしたらテレビが見られなくなる地域や家庭が生じてくる可能性があるということを忘れてはいけないと思います。古市の共聴組合をどのようにしていくのか、技術革新の中では暗中模索の現状ではないか思います。

 テレビが見られるということは、今や最低限度の文化の享有権です。現行憲法の第25条の1には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とあります。権利が有せられなくなるとしたら、それはどこかで保障していく必要があります。しかし、残念ながら、小さな集落のテレビ共聴組合だけで保障して行くには不可能に近いものがあるのです。

 光ケーブルに乗り換えられる余裕のある方はどんどん乗り換えていくかも知れません。そうすると、共聴組合に残るのは、乗り換えることが出来ない人たちということになりますから、共聴組合員の資金負担率がべらぼうな額になってきます。共聴組合そのものが崩壊することになれば、弱者はいったいどうすれば良いのか、その解決方法が見つかりません。

 総務省は難視聴対策としての財政援助の検討に入ったそうですが、これは放送事業者に対しての援助で、末端の難視聴地域の共聴組合にまでは行き届かないのではないかと危惧しています。

 携帯電話が出始めた頃、加入料が8万円、電話機が3万円もしました。当時の電池は半日ほどしか持ちませんし、通話できる場所も限られていました。それが今ではほとんどの所で携帯電話が使え、電波の谷間も少なくなってきました。電池は2日も持ちますし、万一の時は乾電池アダプターもあります。そして今は加入料はなく、電話機本体よりも通信料で採算を合わせているようです。当時支払った加入料は返還してもらっていませんが・・・。

 パソコンのプリンターもジェットインク方式は本体価格が随分安くなりました。しかし、メーカーは交換インクに採算性を転嫁していまして、純正インクカートリッジ以外は動作しないなどの対応が取られており、大量にプリントする者にとっては、結局は随分高いプリンターになっています。

 テレビのデジタル移行はまだ5年間という期間がありますから、通信機器の価格も安くなり、光回線の使用料も安くなるかも。そして、既存の携帯電話の送信塔を使ってテレビのデジタル波が送信されるようになるかも。ワンセグの技術を拡大していけば可能かも。

 現状の設備で回避するという固定観念を離れた、別の新しい方法が見つかるかも知れない技術革新の世の中ですから、不安と期待を持って眺めざるを得ない状況かもしれません。